一人ぼっち国際学会:バンケットで踊る!?学会3日目午後

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一人で学会に来た僕は、なんらかの共通点がある他の参加者を探し、Program Bookに載っている発表者全員のポスタータイトルと興味深いアブストラクトに目を通していた。

この作業から、他に日本人が2人いることを把握していた。

遠くから来た日本人同士ということで共通点がある。

日本人の2人は学会3日目の夜、ポスター発表をする予定だった。

ポスターに行って、自己紹介をして、研究の話を聞かせてもらいたい。



そのポスター発表前のディナーでは、これまでに学会で会ったK君、Cさん、A教授などを探してみたが、見当たらなかった。

日本人らしき2人が目に入った。



「日本人は優しい」と自分に言い聞かせながら、2人のいるところに行ってみた。



日本語で話しかけるか、英語で話しかけるか迷った。

もしも読みが間違っていてこの2人が日本人じゃなかったら、僕はわけのわからん言語で話しかけている変な奴だ。

しかし読み通り日本人だったら、英語で話しかけるのはちょっと失礼かもしれない。



自分の日本人を見分ける勘を信じて、
「すみません、日本人ですよね?僕も日本から来てるんですけど、一緒に座ってもいいですか?」と言ってみた。



一瞬2人の目が大きくなった。

日本語で話しかけられてびっくりしていた。

2人は、理解できない言語で話しかけられてびっくりしているのか?

それとも他に日本人がいたことにびっくりしているのか?

僕には見分けられなかった。



しかしすぐに「あ、どうぞ」とにこやかに言ってくれた。

日本人で良かった~。

KさんとOさんは有名大学、有名ラボのポスドクと博士課程大学院生だった。

「私たち以外に日本人いたんだ~」とKさんが言い、さきほどのびっくりしていた表情は「こんなところに日本人!」だったことがわかった。



2人にとって僕のことはノーマークだった。

僕もラボの人と来ていたらわざわざ大勢の参加者の中から日本人探しなんてしないだろう。

自分が一人で来たことに対してむなしくなりかけたが、そのおかげでこうやって人に話しかけることに挑戦できた。



KさんとOさんにとってはポスター発表前のディナーだが、発表のことを心配している様子は見えず、僕の研究のこととか、大学院のことを聞いてくれた。

僕も2人のラボの居心地とかポスドク後、博士課程卒業後にやりたいことなどを聞いた。

ラボの雰囲気とか、ラボが研究員を募集していることなどいろんなことを話してくれた。




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外国人のノリに合わせていた3日間だったが、日本人の落ち着いた感じの会話にホッとした。

僕は幼少期から大学卒業までアメリカで育ったのだが、アメリカはあまり性に合わなかった。

その理由もあって、日本で大学院に通っている。



他の人はどうなのかわからないが、僕の性格は環境によって結構変わる。

日本人と過ごしているときとアメリカ人と過ごしているときの性格は違う。

日本人の僕もアメリカ人の僕も人見知りということで一致していることには違いないが。。。



しかし今思い返すとアメリカではアメリカ人のノリに合わせようと少し無理をしていたのだと思う。

アメリカの現地校で過ごしていた自分と週一で通っていた日本人学校での自分を比べると、日本人学校の自分のほうが少しだけ、素の自分を出せる機会があった。

この学会で日本人と話し、ホッとした感じは、昔、現地校と日本人学校を行き来した感覚を思い出させた。



KさんとOさんはポスターの準備をしにポスター会場に行き、僕はトークを聞きに講堂に行った。



トークが終わり、ポスター会場に向かった。



まずは学会初日に話しかけてくれたK君のポスターに行き、話を聞かせてもらった。

K君はまだ学部生だが挑戦的な研究をしている。

説明もちゃんとできていた。

最後に“Do you have any questions or suggestions? I would appreciate any advice”とK君は僕に聞いた。



僕は調子に乗って、先輩風を吹かせて、こんな実験をしてみてもいいんじゃない?とsuggestionをいくつかしてみた。

K君はメモを取り出して、誠実にアドバイスを書き留めていた。

K君は良い研究者になりそうだ。



他に気になるポスターを回り、人だかりが落ち着いたころにKさんとOさんのポスターにも立ち寄った。

2人の研究はすごく面白い現象を捉えている。

その現象を2人は異なるアプローチで着実に深堀りしている。

僕の中で思う、カッコイイ日本的な研究スタイルだ。



Oさんは僕と同じく来年の卒業を目指している。

僕のポスターとは違い、Oさんのポスターのデータ量からは迫力を感じられた。

うらやましかった。

しかし話を聞いていると実験系を確立する苦しい時期を経てのデータらしい。

きれいなデータの裏にはやはり苦労や葛藤があったはずだ。

有名大学だからといって、研究が全てスムーズに行くわけではない。

そのような苦労も知らずにうらやましく思う自分は間違っている気がした。

学会が終わったら、研究のラストスパートをがんばろう。



ポスターセッションはあっという間に終わり、学会の打ち上げバンケット(懇親会・レセプション)の時間が来た。

ほとんどの人はまだポスター会場で盛り上がっているようだったが、Kさん、Oさんと僕は日本人らしくちゃんと時間を守り、バンクエット会場に向かった。

この学会のバンクエット会場は半分食事の席になっており、あとの半分はダンスフロアになっていた。

僕らが着いたときは人も少なく、DJが音楽を流しているも、踊っている人はいなかった。

DJがかわいそうだった。

しかし僕は日本人の性格のときも、アメリカ人の性格のときも踊ることは行動の範囲内ではない。

DJさん、ごめんなさい。



ちょっとしたら、Keynote Speaker がやってきた。

彼女はまっすぐにダンスフロアに向かい、踊り始めた。

かっこよすぎる。

他の人の目線など気にしていない。

というか他の人の視線を浴びて楽しんでいるようだ。

さすがこの学会の主役だ。



僕もいつかはこんなところで踊れるほどの度胸が欲しい。

だが今の自分はほど遠い。

他の若者たちも躊躇しているのか、ダンスフロアは大御所たちだけが踊っていた。

傍からみたら、老人ホームのダンスパーティーだが、この人たちは本当にすごい人たちなのだ。



時間が経つにつれ、若者もだんだん踊りに参加し始めた。

韓国人っぽいお姉さんがカジュアルな感じでキレの良い動きで踊っていた。

日本人のKさんとOさんは僕と同様、踊りだす感じではない。



しかしこの学会で有名な白髪のおじいちゃん先生が僕らのテーブルにやってきて、踊れ、踊れ、と身振り、手振りで誘ってくる。

僕らは苦笑いして、やり過ごした。

しかしおじいちゃん先生はしぶとい。



KさんとOさんは笑いながらテーブルを離れ、踊り始めた。



僕はしぶとく残るが、今度はおじいちゃん先生に加わり、KさんとOさんも僕に踊れ、踊れと誘ってきた。

踊るより踊らないほうが恥ずかしいという不思議な感覚に捉われ、僕は踊った。

すごく控えめに。



幸いその直後に流れた曲は  「右足前!三歩下がって!手を挙げて!」などと動きを提示してくれるような曲だった。

プロトコールに沿って動くことなら僕にでもできる。

ちゃんと指示通り手足を動かした。

動き方を指示する曲が終わり、踊る勇気も弱まり、僕はするりとテーブルへと戻った。



Kさん、Oさんとおじいちゃん先生は楽しそうに踊り続けていた。

その後、K君と彼のラボの人たちを見つけて、一緒に乾杯をした。

少し話してから、自分の部屋に戻って、荷造りをした。

次の日のフライトは朝早い。



あれほど心配していた学会は、終わったころには楽しいものになっていた。

出だしは良くなかったが、最後には踊ることができた。

おじいちゃん先生、Kさん、Oさんがきっかけをつくってくれた。

しかしそれは自分から話しかけることに挑戦したから生まれたきっかけだった。



人見知りとして生きてきた人生ではどれくらいのきっかけやチャンスを逃してきたのだろう。



前回の誰にも話しかけることができなかった寂しい学会に比べると今回の学会では人見知りの殻にひびを入れることができた。

でもいつもの生活に、いつもの感じで戻るとひびは修復され、また人見知りに戻ってしまうだろう。


ひびをいったん入れたから、そこから更にこじあけていく努力を続けることを心がけたい。




学会で人見知りっぽい人に会ったときには、どうぞ優しくしてください。

よろしくお願いします。

あなたも僕のように人見知りなら、一緒にがんばりましょう。

学会で他の人に話しかける勇気が出ないときには、この体験談のことをふと思い出して、挑戦するきっかけにしていただければ嬉しいです。




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