その中で1つ目に挙げられたスキルは、「良い研究テーマ・クエスチョンを考える能力」です。
良い研究テーマが思いつかないと、研究者としてやっていくのが難しくなりますよね。
そこで今回は、理系博士課程の研究テーマを決める際に僕が考えたこと、考えればよかったこと、そして考え続けていることについて紹介します。
大学や大学院で研究テーマが決まらない時期は辛い
現在、僕は自由度の高いラボに所属しています。
研究テーマを決めるにあたっても、ボスは「好きなことをしていいよ」という指導スタイルです。
研究室に入り「自分のやりたい研究ができる!」と喜んでいたものの、研究テーマの決め方の切り口やアプローチがなく、研究テーマを自分で決めるということに悩んでいました。
「なんでもしていい」という自由をありがたく思う反面、自己責任というプレッシャーが重くのしかかっていました。
良い研究テーマの判断ポイント:「成功する可能性」と「得られる知識」
研究テーマをどうやって決めたらよいのか悩んでいた時に参考になった記事があります。
ユリ・アロン先生(Dr. Uri Alon)による“How to Choose a Good Scientific Problem”という記事です。
この記事によると、良い研究テーマ(プロジェクト)を決めるには2つのポイントが重要です。
それは「成功する可能性」と「成功した場合に得られる知識」です。
この2つのポイントをもとにテーマの良し悪しを考えると下記の通りになります。
【最も良い研究テーマ(プロジェクト)の条件】
1.成功する可能性:高
2.成功した場合に得られる知識:多
【最も良くない研究テーマ(プロジェクト)の条件】
1.成功する可能性:低
2.成功した場合に得られる知識:少
もちろん成功する可能性が高く、成功した場合に得られる知識が多いプロジェクトを見つけるのがベストです。
しかし多くの知識を得られるようなプロジェクトは大抵難しく、成功する可能性も低いですよね。
一体どうすればいいのでしょう?
大学院生は「成功する可能性」を優先しよう
大学院生は「成功する可能性」を優先すべきである、とアロン先生は助言しています。
「成功した場合に得られる知識」に関しては、「比較的多い」ものを選べばよいそうです。
経験を積むにつれ、「成功する可能性」よりも「成功した場合に得られる知識」を重視するようになるのかもしれません。
そして、成功する可能性が「低く」ても、得られる知識が「多い」プロジェクトに挑戦してみたい、と思うようになるのかもしれませんね。
良い研究テーマを決めるための判断基準に、僕はもう1つの要素を考えておけばよかったと思っています。
それは「核となるデータを得られるまでの時間」です。
僕はプロジェクト全体がかかる時間をぼんやりと考えていたのですが、核となるデータが出るまでの時間を深く考えていませんでした。
この盲点により、プロジェクトの核となるデータにたどり着くまでに長くかかり、その間は心理的に不安な状態になっていました。
データが出るまで、フィギュアを創ろうとしても創れないし、論文を書き始めたくても書くことがなくて、立ち往生しているような感覚でした。
「核となるデータが出なかったら終わりだな」とバクチに近い感じで、自分の将来が揺れているのが怖かったです。
やはり、核となるデータが早く出そうなプロジェクトを選ぶことをおすすめします。
ということで大学院生に理想的なプロジェクトは以下の通りになります。
【大学院生向け:良い研究テーマの判断基準】
1.成功する可能性が高い
2.成功した場合に得られる知識が比較的多い
3.核となるデータを得られるまでの時間が短い
次に、研究テーマにたどり着くまでの具体的な手順をご紹介したいと思います。
実際に僕はこの方法を活用して、博士課程の研究テーマを決めました。
良い研究テーマを決めるための空想実験
良い研究テーマを決めるには「 成功する可能性」、「成功した場合に得られる知識」、「核となるデータを得られるまでの時間」を考慮しますが、そのとき、僕がおすすめなのが「空想実験」です。
実際の実験には時間と労力がかかりますが、空想実験は比較的短時間ででき、必要な労力は「考える力」のみです。
特に、僕のように妄想好きの方なら、楽しみながらできるのではないでしょうか。
また、空想実験は「良い研究テーマ・クエスチョンを考える能力」を鍛えるための自主トレにもなります。
空想実験の手順
僕が空想実験に使用しているのはExcelです。
以下の手順で、Excelシートにアイディアを書き込んでいます(僕はこのシートを「Excelアイディアシート」と呼んでいます)。
1.研究したいテーマ・クエスチョンをできるだけ多くExcelにインプットする(ここでは量産がポイントなので、良し悪しは気にしない)
3.各テーマ・クエスチョンにつき、「成功した場合に得られる知識」を書く
4.各テーマ・クエスチョンにつき、「どのような実験が必要か」を書く
5.各実験につき、「核となるデータを得られるまでの時間」を書く
6.各テーマ・クエスチョンの「成功する可能性」を予測する
いくつかのプロジェクトが集まったら、その中から、「成功した場合に得られる知識」、「成功する可能性」、「核となるデータを得られるまでの時間」のバランスが一番良いものを選ぶことをおすすめします。
空想実験を続けることが「良い研究テーマ・クエスチョンを考える能力」の自主トレになる
空想実験で重要なのは、過去の自分のアイディアをアーカイブとして保存することだと思います。
僕もここ数年で60ほどの案を「Excelアイディアシート」に書き留めてきました。
思いついた瞬間は「最高のアイディアだ!」と自画自賛できても、時間が経つと「なんてショボいんだろう」と我に返ることがほとんどです。
このExcelアイディアシートのアップデートを続けることが、「良い研究テーマ・クエスチョンを考える能力」を鍛える自主トレになると思います。
もう研究テーマが決まっている方でも試してみる価値があると思います。
まとめ:研究テーマを決めるには「成功した場合に得られる知識」、「成功する可能性」、「核となるデータを得られるまでの時間」を考慮して、空想実験をしてみよう。そして、複数の研究テーマの中から最適なテーマを選ぼう!
アロン先生のラボに新しい研究員が入る場合は3ヶ月は実験をさせず、研究計画をじっくり考えさせるそうです。
新しい研究員たちはおそらく、「成功した場合に得られる知識」、「成功する可能性」、「核となるデータを得られるまでの時間」について深く考えているのではないでしょうか。
みなさんも研究テーマを決める際には、やみくもに実験をする衝動を抑え、まずはこの3つの要素を考慮してみてはどうでしょうか。
今回はカメの投稿でした~
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具体的な研究の進め方や論文の書き方に加え、心理的につまずきやすいポイントにも触れているので、自分にとってはすごく参考になりました。
おまけ:Richard Hammingが「研究にどう取り組むべきか」について言及している動画がすごくおすすめです。どのようなことを考えて研究に挑戦するかについても言及しています。
himazu archive 2.0というサイトで和訳が掲載されていますので、そちらも参考になると思います。
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