周りの研究室や他の人の話を聞いても、「楽しい研究室」を保っているラボは少ないように思えます。
研究が楽しくなくて研究室に行きたくない、と思っている方も多いのではないでしょうか。
研究室を存続するために重要なのは生産性ですが、楽しみながら研究をすることに、もうちょっと重点を置いてもいいのではないかと思います。
楽しく研究をできる環境があれば、自然と生産性も上がるのではないでしょうか。
今回は「楽しく研究するために重要な7要素」について考えてみます。
同時に、楽しく研究できる研究室を実現するために「指導教員と学生ができること」を考えます。
他にもアイディアがありましたら、コメントください。
1.研究テーマ・実験を決めるときに自分の意見を取り入れてもらえる
何をするにしても「やらされている」と感じると楽しくないですよね。
研究においても「やらされてる感」が強いと楽しくないと思います。
逆に、自分の考えた実験に挑戦することはワクワクしますし、自分の仮説が正しいのかを知りたくて一段とやる気も沸いてきます。
□ 指導教員ができること:
- 部下が意見を言えるような環境をつくる
- 命令ではなくsuggestionをする
- 部下が変な実験を提案したときは理由もセットで優れた実験を提案する
- 他のラボメンバーの意見も集める
- 部下の力量に合わせて、自由度を与える
□ 学生ができること:
- 自分の研究や実験系のことはボスよりも熟知する
- 自分の意見を伝える
- ボスからの信頼を得られるように働く(意見を受け入れてもらえるように)
2.研究テーマに意義を感じる
短い人生、自分にとって関心のない研究テーマを研究していたら楽しいわけないですよね。
一方で、限られた人生の時間を使ってでも知りたいことを研究することは、充実した生き方なのではないでしょうか。
□ 指導教員ができること:
- 研究の魅力を部下に伝える
- 実験について細かく指摘するだけでなく、どのように研究が広がる可能性があるのかも話す
- 自分の専門テーマ以外のことにもアンテナを張り、共同研究者などとの繋がりも大切にする(部下に対して的確なアドバイスや対応ができるように)
- 研究テーマと関係なくても、面白そうかつ部下が興味を示しているなら、追求させてあげる
- 学会への参加など、部下に学びの機会を与える
□ 学生ができること:
- 「自分が知りたい・意義があると思うことは何なのか」自問自答を続ける
- 今の研究テーマと関係なさそうな結果でも、面白そうならボスに見せる
- 研究室にこもりすぎないようにする
3.研究を通して成長できる
同じ、めんどくさい、つまらない作業をやらせれているとやめたくなりますよね。
□ 指導教員ができること:
- 新しい実験系を取り入れ続ける
- 学び続ける
- 部下に「研究者になることしか許さない」みたいなオーラを出さない
- 部下が人としても成長できるよう、的確に助言・サポートする(例えば、研究者になりたくないと言っている人には、就職、インターンシップ、教育、ボランティア、サイエンスメディアなど、他の成長の可能性や機会を勧める)
□ 学生ができること:
- 新しいことはチャンスと捉える
- 自分が将来どのような職に就きたいかが分かったら(もしくは変わったら)、そのことをボスに伝える
4.なんかできそうな気がする
無理そうな研究だと、不安や焦りでいっぱいになってしまうと思います。
不安を感じていたら、楽しみを味わう余裕なんてないですよね。
□ 指導教員ができること:
- 希望を与える
- 噛み砕ける量の実験を与える
- 褒めるテクニックを磨く
□ 学生ができること:
- 無理そうな実験なら、代替案を準備する
- 無理そうな実験でも、他に自分の案がなければとりあえず言われた通りやってみる
5.ちょっとでも前に進んでいる気がする
成果が出ない時期が長く続くと、研究が面白くないと感じてしまうのではないでしょうか。
また、研究以外の雑用が息抜きになればよいですが、そうでない場合には時間が奪われることに焦りを感じてしまいます。
研究など全体のバランスが取れている状態で、少しでも前に進んでいる感覚を実感できれば、より研究を楽しむことができると思います。
□ 指導教員ができること:
- ネガティブなことばかりではなく、ポジティブなことも言う
- 雑用や新メンバーの指導などを同じ人ばかりに回さないで、ラボ全員で協力体制を整える
- 研究室外部からの依頼など、本質的に研究と関係のない業務を安易にOKしない(特に部下にやらせる場合は、研究に支障が出ないようにする)
□ 学生ができること:
- うまくいかないときは改善点などを提案する
- 研究室外部からの依頼など、本質的に研究ではない業務が回ってきたときには、できそうならば快く引き受ける(できそうでない場合には「NO」と言う勇気を持つ)
- 研究日記をつける
- ネガティブなデータもまとめておく
6.周りの人に恵まれている
周りの人がネガティブだとその感情が伝染します。
共通の試薬や機具を他の人が使えるように保ってくれない人が多いと、楽しく研究するのは難しいです。
Daniel Kimの成功循環モデルからも、関係の質が結果の質に関わると提唱されています。
□ 指導教員ができること:
- 研究ができそうだから雇う・雇わないより、ラボにポジティブな影響を与える人か否かを見極めて採用を決める
- 面接時には、部下にも候補者と話す機会を与え、意見を聞く
- 他の人を手伝うことを賞賛する
- 知り合いの教授やシニアレベルの研究員に部下を紹介する
□ 学生ができること:
- 飛び込む前にラボの情報収集をする
- 周りの人を手伝う
- 最低でも共有のスペースは全員が気持ちよく使えるように整えておく
- ラボミーティングで積極的に意見を言う
7.生活上、ドン底ではない状態にいる
多少貧乏でも精神的にベストじゃなくても、研究はできると思います。
でも、経済面、精神面、健康面でどん底だと、研究なんかより、生きのびることが頭の中を支配しますよね。
そんな状態で研究を楽しむことは無理だと思います。
□ 指導教員ができること:
- 学振、フェローシップ、奨学金返済免除などへの応募を全力でサポートする
- 良いレファレンス・レターの書き方を学ぶ
- 部下が休みを取りやすい環境を作る
- 定期的に部下と会って、異常なことが起きてないかアンテナを張る
- 部下の家族のことも気遣う
- 部下をどならない
□ 学生ができること:
- ラボに行けなくなるほど精神状態や生活状況がひどくなる前に、ボスや周りの人、カウンセラーなどに相談する
- 応募可能なフェローシップや基金のことを調べておく
- 家族や友達との繋がりを維持する
- 休みを取る
- 自分の体のサインを無視しない
まとめ
楽しく研究しているときは、この7つのことが揃っていると思います。1.研究テーマ・実験を決めるときに自分の意見を取り入れてもらえる
2.研究テーマに意義を感じる
3.研究を通して成長できる
4.なんかできそうな気がする
5.ちょっとでも前に進んでいる気がする
6.周りの人に恵まれている
7.生活上、ドン底ではない状態にいる
「研究室に行きたくない」と思っている人にもできることがあると思います。
少しずつ改善していくことで、研究を楽しむことができるようになるのではないでしょうか。
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