焦りで研究も実験もうまくいかない
「あれ?なんでこんなに焦ってるんだろう?」
最近、ふと自分の焦りに気づきました。
自分の作業スペースに目をやると、捨ててもいいサンプルやチューブが溜まっていて、後片付けが全然できていません。
というか実験以前に、必要な器具がうまく働かなかったり、遺伝子改変動物が作れなかったりで、準備の段階でつまづいています。
研究は難しいからこそ楽しいという部分もありますが、研究が進まない時期が続くと、研究室に行きたくないし、もう博士課程をやめたいと思うこともあります。
このままでは博士課程を卒業できないのではないか。。。
そんな思いが頭をよぎり、さらにストレスを感じています。
焦りや不安があると、次に取るべきステップが見えなくなったり、近道や逃げる姿勢を取ってしまい、結果的に失敗を招いてしまうので、何か対策を考えなければなりません。
「研究がうまくいかない、進まない」という時に取るべき対策について考えてみました。
焦りが生産的に働く場合
ですが、焦りは必ずしも悪いものではないと思います。
例えば、今日から2週間後に提出しないといけないレポートがあるとしましょう。
提出期限はまだ先だからと、レポートに手をつけないまま、だらだら過ごしてしまったことはありませんか。
しかし期日が明日に迫ると、みるみる「焦り」が生じ、スーパー集中力で片付けられた、という経験がある方も多いのではないでしょうか。
僕もこのような「焦り」に何度も救われてきました。
初めての国際学会用に、口頭発表を準備しているときは、2週間くらい前から本格的な「焦り」が生じていたので、口頭発表の暗記を早くから始めました。
そのおかげで多少の緊張はあったものの、本番で力を出し切ることができました。
動物行動学的に捉えると、焦りは「闘争するか、逃走するか (fight or flight) を選ぶ必要がある」ということを伝えてくれているのではないでしょうか。
焦りが非生産的に働く場合
なぜなら、焦りによってやる気が沸いてくるのではなく、あたふたとしてしまうからです。
焦りを感じると、短期的な目標を優先しすぎてしまったり、ちょっとでも難しそうなものにはチャレンジしなくなったり、うまくいかなかったときの言い訳を考えたり、博士課程をやめて他の職種に移ったら簡単に成功するんじゃないかと考えてしまったり。。。
では、なぜ「レポート期日の焦り」は生産的で、「研究の焦り」は非生産的なのでしょうか?
僕の場合、それは「自信に関する違い」だと思います。
焦りは「闘争するか、それとも逃走するか (fight or flight) を選ぶ必要がある」ということを伝えてくれます。
レポートのような比較的スケールの小さいことだと、完成できるという自信があるので、やってやるぞー!という「闘争」の気持ちになれます。
しかし、研究に対しては「逃走」を選んでしまい、逃げ腰になったり、言い訳を思い浮かべたりしてしまいます。
それは僕自身、まだ研究者としてのスキルに自信がないからだと思います。
「焦り」を完全になくすことは不可能です。
代わりに、焦りを感じたときにどう対応するかを見直すことが重要なのだと思います。
研究から逃げたくなる2つの理由
「闘争 or 逃走」の枠組みで考えてみると、修士課程・博士課程から逃げ出したくなる理由が2つ浮き上がってきます。
1. 「研究」が倒せそうな相手ではないと感じている
2. 研究者としての自信が持てない
研究から逃げたくなる理由-1:「研究」が倒せそうな相手ではないと感じている
戦いで勝つには「自分が強くなるか」または「相手を弱くするか」の2つの方法がありますよね。
研究の場合、より簡単なのは「相手を弱くすること」だと思います。
対策1:「研究」を膨大なものから小さい具体的なステップに分ける
研究を具体的な小さいステップに分けることができれば、「このステップはとりあえずできそう」と思うことができ、希望が見えてくるのではないでしょうか。
対策2:他人の意見や運に左右されない目標も立てる
□ 他人の意見や運に左右されやすい目標
- Natureに論文を載せる
- 大発見をする
- 実験をするときは3ないルールを守る(目的のない実験、コントロールのない実験、後片付けのない実験はするな)
- 毎日、論文作成を少しでも前に進める(フィギュアをいじる、文章を書く、ストーリーの流れを見直す、基礎知識の勉強をする)
他人の意見や運に左右されやすい目標だけではなく、自分の力のみで達成できる目標も立てると、自分なりの成功が見えてくるはずです。
対策3:恐れていることの「最悪のケース」を具体的にイメージする
最悪のケースを想像するのは、一見良くないことに思えるかもしれません。
しかし、敵を知るという意味では必要なことだと思います。
研究が全て失敗に終わり、論文も書けず、卒業もできず、大学院生活が終わってしまうということでしょうか。
そして、卒業できずに大学院生活を終えてしまったことを、家族や友達に伝えないといけないことかもしれません。
ゾッとする反面、ふっきれる感じも出てきます。
研究が失敗に終わっても、他の仕事を探せば何かは見つかるでしょう。
他人からの期待に関しても、皆それぞれ自分のことで精一杯で、僕のことは気にしていないでしょう。
失敗を伝えれば、次のステップを応援してくれるに違いありません。
・・・となると、気にしているのは自分だけですよね。
カタチのない恐れにビクビクしながら過ごすより、恐れを具体化して恐れと戦うことを決めれば、気持ちが楽になると思います。
この「最悪のケースをイメージする」というエクササイズは、Tim Ferrissのアイディアです。
このエクササイズに関するTimのTED Talkはかなりおすすめです。
日本語字幕も設定できるので、興味のある方はぜひどうぞ。
1. 研究を弱らせる(=思い込みをなくす。自分が処理できる以上のものに膨らませない)
2. 研究者としての自信をつける
対策4:客観的に自分の成長・成果を見返す
研究者としての「自信の源」は何でしょう。
となると、もっと小さいことから自信を得るしかありません。
具体的には、ちょっとした実験の成功や自然界の現象について理解を深めることができた経験を記録しておくことが重要だと思います。
その一環として僕は毎週「うまくいったこと」と「うまくいかなかったこと」をExcelで記録しています。
対策5:他人と比べない
研究がうまくいっている人を見て「○○さんみたいな成果が欲しい」と思ってしまうことはありませんか。
そんなとき、僕は次の言葉を思い出すようにしています。
和訳するとこんな感じだと思います。
どんなに研究がうまくいっている人でも、成果を挙げている人でも、他人からは見えない悩みを抱えているはずです。
周りから見えているのは一部分だけ。
その背景にあるであろう不安や焦り、たくさんの苦労や努力は見えていないものです。
つまり、Regina Brettの言葉どおり、もしかしたら見慣れている自分の悩みが1番かわいいのかもしれません。
対策6:焦りの症状を和らげる
運動・食事・睡眠の改善は、どのような焦りにでも効くと思います。
「焦り」はたくさんのエネルギーを秘めているものだと思います。
焦りがちで逃げ腰な僕にとっては大きな課題ですが、小さなことから少しずつ自信をつけていきたいと思います。
今回はカメの投稿でした~。
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研究の進め方や論文の書き方が具体的に書かれていて、心理的につまずきやすいポイントにも触れているので、自分にとってはすごく参考になりました。
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