商人の格言から、プロの研究者としての戦術を考える

こんにちは。

今日は中世より栄えた日本三大商人のうちの一つ近江商人(おうみしょうにん)の商売における10訓を紹介したいと思います。

研究者を研究業界における商品として捉えると、とても役に立つ格言があると思ったので紹介したいと思います。


今回は10訓のうち最も気に入った5つを自戒の意味を込めて自分なりの解釈を述べたいと思います。

さて近江商人の10訓ですが以下のような内容です。



近江商人の商売十訓

1. 商売は世の為人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり

2. 店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何

3. 売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる

4. 資金の少なきを憂うなかれ、信用の足らざるを憂うべし

5. 無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ

6. 良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり

7. 紙一枚でも景品はお客を喜ばせる、つけてあげるもののないとき笑顔を景品にせよ

8. 正札を守れ、値引きは却って気持ちを悪くするくらいが落ちだ

9. 今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせ

10. 商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ

印象的なのが長期的目線と短期的な目線を上手に使い分けているところです。
例えば「売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる」、「無理に売るな、客の好むものも売るな、客の為になるものを売れ」など長期に渡り利益を出す哲学がある一方、「今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせ」や「商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ」など短期的にも成果を出すことも重視しています。

以下より研究生活にも応用できそうな格言と私なりの解釈を書いてみたのでどうぞ。


店の大小よりも場所の良否、場所の良否よりも品の如何
   この格言から私が思うのは勝負に必須であることを欠いてはそもそも勝負にならないということです。

例えば良い研究をするにはリソースは無視できません、自分の狙ったレベルの研究成果を出すために必要なリソースを一つでも欠いていたら何かで埋め合わせしなければなりません。お金やリソースがあっても人脈はどうでしょうか。勝負するには必須である物や環境を選ぶことを軽視しないことが重要ですね。


売る前のお世辞より売った後の奉仕、これこそ永遠の客をつくる
   新しいポジションに着く際には自分を良く見せて雇ってもらうわけです。その瞬間成功すれば良いのですが、本番はその後だと最近思います。研究室で教授とうまくやった人はポスドクとして出て行った後も、たまに訪問して少し仕事をしたりとつながりをキープしている人が多いです。場合によっては、ポジションが空いた時に呼び戻したりということもあるそうです。自分を売った後、つまり雇われた後うまくラボに貢献できれば、出て行った後も教授が永遠の客になってくれるのかもしれません。その際良好な人間関係を築けているかも鍵になります(例えあまり良い人に囲まれていなくても)。


良きものを売るは善なり、良き品を広告して多く売ることはさらに善なり
   良いものとは研究の世界でいうと研究成果と言えるのではないでしょうか?自分が良いと思った研究成果を発表するのは誰でもやっていることでしょう。この格言にならえば、おそらくただ発表するのではなく、より多くの人に知ってもらうという意識を持つことが大事といえるでしょう。一つの学会でちょこっと発表するのではなく色々な学会で発表し多くの人に知ってもらう、ポスター発表ではなくオーラルの発表に申請してみるなど、宣伝することを怠らないようにしたいです。良い研究結果を宣伝して多くの人に知ってもらうことはさらに善と考えれば、重い腰をあげて出張する元気が湧いてくる気がします。私は、一つの学会で人があまり来ないとガッカリして引きこもりがちなのですが改善しなければなりません。

 
今日の損益を常に考えよ、今日の損益を明らかにしないでは、寝につかぬ習慣にせ
   その日の成果を常に考えるようにすると言い換えることができると思います。その一日は生産的だったか?誰かの仕事を手伝うだけで終わっていないか?など自分の定義における損益を振り返って次の日に生かしたいです。山中教授の3ないルールにもあったように後片付けのない実験はよくありません。その日の成果を家に帰る直前10分でも良いのでまとめる習慣をつけたいですね。私は以前の記事にあったようにパワーポイントに結果をまとめるよう意識しています。少しの進歩でも視覚化して記録するとしないとでは、長期的には大きな差がつくのではないでしょうか。


商売には好況、不況はない、いずれにしても儲けねばならぬ
   研究には成果がバンバン出る時と全く出ない時がありますね。でもプロになるからには、調子の良くない時期でも何か成果と呼べるものを生み出さなければなりません。スポーツでいえば、強豪チームは結果を勝ちに持っていけなくとも引き分けにとどめることができます。研究においても最低限引き分けに持っていけるスタイルを身に着けたいです。



好きな格言はあったでしょうか?ちょっとした助けになれば幸いです。


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