マイケル・ジョーダンは良いコーチになるだろうか?
ずば抜けた身体能力、野獣のような闘争心、そして残り数秒で決める逆転シュート。。。
これをジョーダンに教えてくれと言っても教えられるでしょうか?
おそらく無理でしょうね。
ジョーダンも無理だと分かっていると思います。
ジョーダンのしぐさの一つで有名なものが「シュラグ(shrug)」です。
それは肩を上げて、手を開いて「俺でもどうやってんのか分かんね~」と自分で自分のすごさに驚くというポーズがあります。
こりゃ~コーチに向いてないですよね。
しかしジョーダンにはひょろっとしてあまり身体能力が優れていないスティーブ・カーというチームメートがいました。
カーはシュートが得意だったけれど、他のことはあまりできず、ジョーダンがスーパープレーをして相手チームの守備を引き付けたあと、パスをもらってシュートを決めるというシチュエーションが多かったです。
現在、カーはNBAでコーチをしており、ここ3年で2回優勝し、コーチとしての活躍が評価されています。
カーはスター選手ではなかったが、スター選手ではなかったからこその経験がコーチとして活かされたとも考えられます。
NBAが好きすぎて前置きが長くなりましたが、要するに、「良い選手の基準」と「良いコーチの基準」は違うということです。
スター選手がコーチに向いているかというと、そうとも限りません。
そしてスターじゃなかった選手が素晴らしいコーチになる場合があります。
研究の世界ではどのような状況でしょうか?
研究の世界では早い段階でスター選手がコーチへの道に乗せられてしまいます。
ずば抜けた研究成果を出した研究員は他の人よりも早く、教授やグループ・リーダーのポジションに就きます。
ここで二つの効率が良くないことが生じます。
1.スター選手がまだ選手として活躍できるのに、コーチになることが当たり前になっていること
2.コーチとして向いていない人がコーチになっているということ
まずは一つ目から。
研究の世界では50歳や60歳でも選手としてバリバリ活躍できる人がいると思うのですが、このようなチャンスはありません。
その理由はやはり、研究者としての終点は、教授又はグループ・リーダーというコーチの道しかないからです。
多くの研究員のポジションは年齢制限や任期があり、大抵40歳くらいの上限があります。
この問題の改善策としては、一匹狼研究員というポジションがあっても良いように思います。
この一匹狼研究員は研究所や国からお金をもらい、大学の設備を使って研究をする。
ラボに属さなく、上司もいなければ、部下もいなくていい。他の研究者と共同研究したければしてもいいし、したくなければしなくていい。
このようなポジションが大学や研究所にあれば新たな研究者としての終点ができるのではないでしょうか。
無理やりスター研究員をコーチに転向させると、スター研究員のスキルが無駄になってしまいます。
(一見、新しくできた卓越研究員制度(https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/takuetsu/)に似ていると思う方もいるかもしれませんが、これとは違います。
卓越研究員制度は年齢制限などがあり、終点はやはり教授やグループ・リーダーです。新たな終点をつくっているわけではありません。)
このような状況ですと、スター選手はコーチになりたくなくても、研究を続けるためにはコーチになることを選びます。
そしてコーチを選ぶ基準が選手としての成果なので、スター選手がほとんどのポジションを勝ち取ります。
なので研究の世界ではスティーブ・カーのような人はコーチになるチャンスはありません。
この状況から生じるのが、二つ目の研究の世界の効率の良くないことです。
コーチとして向いていない人がコーチになっているということです。
選手として優れていればコーチになれるので、コーチに向いていない人が多くの学生や研究員をまとめる立場になっていきます。
このような状況だとブラック研究室がたくさんできるのも驚くことではないですよね。
みなさんの指導教授は良いコーチでしょうか?
おそらく選手として活躍したことは間違いないと思います。
しかし選手としての活躍はコーチとしてラボを運営するスキルとは関係ないことですよね。
この問題の改善策としてはコーチとしての適正を判断できるようなポジションが必要なのだと思います。
大学院生ー>ポスドクー>助教授ー>教授という進路以外に教授になれる進路を創れないだろうか。
コーチになりたい人は大学院卒業後にポスドクとして選手を続けるのではなく、コーチとして研究室での指導の機会があればどうだろうか。
そうすればコーチとしての適性があるかを早い段階で知ることができるし、コーチの経験を積むこともできる。
具体的には修士院生の指導をするポジションはどうだろうか。
研究室で修士院生の指導を担い、修士院生と書いた論文では自分の名前がラストオーサーとなり、指導者としての業績となる。
このようなポジションで修士院生が論文を出せるまでの指導ができたのであれば、コーチとして優れているという評価基準になるのではないでしょうか。
修士院生研究指導者として活躍した人はおそらく指導に向いている人であり、新たな人材が教授やグループ・リーダーになるチャンスが出てくるのではないでしょうか。
大学院生ー>修士院生研究指導者ー>教授という進路ができてくると思います。
この二つの問題点が解決されれば、研究の質があがり、ブラック研究室も減るのではないでしょうか。
僕はマイケル・ジョーダンにコーチをさせないと言っているわけではありません。
望ましいのはマイケル・ジョーダンができるだけ長く選手として活躍できることと、スティーブ・カーでもコーチになれるような道筋があってほしいということです。
マイケル・ジョーダンもコーチになりたければもちろんチャンスを与えるべきだと思います。
いろいろと提案を書いてみましたが、現在の状況は当分続くと思います。
僕ら大学院生や若手はどうすれば良いのでしょう。
やはりスター選手になれるようがんばらないといけません。
しかし、将来的に健全で生産的なラボを運営したいのであれば、コーチとしてのスキルも意識しないといけないと思います。
どうすればコーチとしてのスキルを大学院生時代から伸ばすことができるのかを今後考えてみようかなと思います。
興味があればまた訪問してくださいね~。
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