海外ポスドク面接:準備、内容、服装など(ドイツ)






とある学会で、ドイツのラボの教授に会うことができたが、その後1回のスカイプ面接を経て、現地面接に進めることになった。

思いのほかスムーズに事が進み、自分でも驚いた。

僕の周りのポスドク希望者も、高確率でポジションを獲得できている気がする。

臆測だが、大都市の超有名ラボ以外はポスドクをリクルートするのに苦労しているのかもしれない。

自分がフィットする「穴場ラボ」を見つけることができれば、ポスドク先が見つかる可能性は決して低くないと思う。




ポスドク先探しと言えば、通常、複数のラボに同時に応募する人が多いと思う。

そのほうが時間をセーブできるし効率が良いのだが、不器用な僕は1つずつ的を絞って応募することにした。

事前にいくつかのラボを調べ、1番行きたいラボから応募をしたら、運よく現地面接に呼んでもらえた。

この記事では、僕が実践した「海外ポスドクの面接準備」と「面接日当日のこと」について書きたい。





海外ポスドク面接スケジュール:僕の場合


面接予定日の2週間くらい前に、具体的なスケジュールがメールで送られてきた。



面接日

◆午前:教授との面談、自分のプレゼン

◆昼食:ポスドク3人とランチ

◆午後:研究員や大学院生など5人と個別面談

◆夕方:教授と当日2回目の面談



面接は、朝から晩まで1日がかりだ。

なんとなく気が重くなったが、タヌキのスーパーハードスケジュール(2日間かけて教授数人を含むたくさんの人に面接されるというもの)と比べたら、少しは楽に感じられた・・・とは言え、面接日当日は緊張しっぱなしだった。 




面接準備


昨年タヌキがアメリカでポスドク面接を経験していたので、タヌキの面接体験記を参考にしながら、僕なりの準備を進めた。

以下、僕が実践した「海外ポスドクの面接準備」です。




 1. プレゼンの内容調整と練習



  • 面接の3週間〜1ヶ月前くらいに、ラボの秘書さんにメールをしてプレゼンは誰に向けてすることになるのかを確認させてもらった(それによって、内容の調整をしようと思ったから)。

  • 研究所全体に向けたプレゼンなら、学会でするようなトークが良いと思う。僕の場合「ラボメンバーに向けたプレゼン」とのことで、新たに「自己紹介」と「採用されたらやりたいプロジェクト」のスライドも組み込んだ。
  • プレゼンの制限時間は30分。

  •  面接の2週間くらい前にはスライドを完成させて、口頭練習をスタートした。自分でタイムを計りながら「2〜3回 / 日」のペースで口頭練習を続けた。
  • 緊張すると早口になるクセがあるので、ゆっくり落ち着いて話すことを意識した。




2. 教授 および ラボメンバーとの面談に向けて




  • ポスドク期間中にどんなプロジェクトがやりたいのか考え、具体的なアイディアを説明できるようにしておく。

  • 教授の最近の論文(特にレビュー:総説)を読んでおく。




3. その他の準備




(1) 服装




  • ワイシャツ、ジャケット、カーキパンツ、革靴を着用した。ネクタイはしなかった。

  • フォーマル vs. カジュアルの度合いは、応募先の教授の雰囲気や研究分野のスタンダードに合わせるのが良いと思う(ちなみに僕は生物系です)。




(2) ラボへのお土産を用意する




  • 日本人らしく(?)手土産を用意した

  • お土産を買う前にラボページをチェックし、在籍メンバーの人数を調べる。ラボ人数+α」の個数は確保しておいた。
  • 僕は個装パッケージされている郷土菓子を購入した(いざ買う時には、正直迷ってしまった。なぜならドイツはエコな国だから、「個装パッケージ = 環境のことを考えていない奴」と思われるのではないかと思ったから。結果、問題なかった。むしろ、日本の繊細で丁寧なパッケージや一口サイズのお菓子が珍しいようで喜ばれた)。

  •  訪問中、ラボ以外の人にもお世話になるかもしれないので、ちょっとしたお菓子を別途用意しておいた(後々役立った。買っておいてよかった!と思った)。


 

(3) 海外wifiをレンタルする




  • 海外滞在中、wifiがあるのとないのでは大違い。僕は、評判の良い「global wifi」をレンタルすることにした。いくつかプランがあるが、「4G LTE 大容量(600MB / 日)」を選んだ。十分な容量だった。
  • 海外パケット定額
    【格安!1日300円から】

  • ホテルはwifiが整っているが、外出の際、道に迷った時などwifiがあって助かった。



(4) 渡航ビザが必要かどうかチェックする




  • 例えばアメリカの場合には、事前に「ESTA(電子渡航認証)申請」が必要だが、日本からドイツの場合は何も必要ないので、パスポートだけでOK。



(5) パスポートの有効期限をチェックする




  • パスポートの残存期間が6ヶ月以上じゃないと、出入国が認められない国もあるようなので、要チェック



(6) 面接地までの行き方を事前にチェックする



  • 地図アプリで経路チェックはできるが、不慣れな土地で不安だったので、面接前日、電車でホテルからラボまで実際に行ってみた(この時もglobal wifiが活躍した)。
  • 海外パケット定額
    【格安!1日300円から】

  • ホテルからラボまでどれくらいかかるかわかったので、前夜は安心できたし、当日の朝もスムーズに現地に向かうことができた。


僕は以上のような準備をして、海外ポスドクの現地面接に挑みました。

続いて、面接日当日です!




海外ポスドク面接の内容 〜 回想記 〜



面接日当日はホテルで朝食を取り、プレゼンの練習を1回して、ラボへ向かった。

前日の予行練習のおかげで迷わずラボに到着。 

予定よりも早く着いたので、フロント付近のソファでしばし待機し、面接時間の5分前に受付で「A教授に面接で呼んでいただきましたカメです。」と伝えた。

受付の人が連絡を入れてくれ、A教授が階段から下りてきた。

以前、学会で会ったときは髭がなかったが、今は立派な髭を生やしていた。



A教授の部屋で少し雑談をしてから、プレゼンのためにセミナールームに移動した。

最初、僕のPCがプロジェクターと接続されないというアクシデントがあり、かなりハラハラしたが、ラボメンバーの方がケーブルを変えてくれて、問題なく投影できた。

プレゼン自体はめちゃくちゃ緊張していたものの、練習どおり、制限時間ほぼぴったりに終わった。


プレゼン後のQ&Aセッションでは、教授やラボメンバーからいろいろな質問が飛んできた。

ほとんどは答えられたが、答えられないものは、That's a great question. I don't know the answer to that yet, but I would like to try to address that in the future. で切り抜けた。



その後はA教授とラボメンバーとの個別面談だった。

聞かれた質問は・・・

  • うちに来るとしたら、どんなプロジェクトのアイディアがある? (この質問は、教授からも複数のラボメンバーからも何度か聞かれた)

  • 来るとしたらいつから来れる? 

  • どういうポスドクフェローシップに応募することを考えている?



僕の研究に関するテクニカルな質問は、プレゼン後のQ&Aセッションでほとんど聞かれたので、実際の面談中には、僕の方から相手のプロジェクトについて質問することが多かった。

しかし途中、思わずギクっとしたのが、教授が僕にこう言い放った時・・・

「私に聞きたいことがたくさんあるだろうから、なんでも質問していいよ。」

これは盲点だった。

数秒沈黙が続き、「特にないです。」と言いそうになったが、沈黙を耐え忍んで質問を絞り出した。





「先生の研究室の博士課程学生やポスドクには、ラボを出るまでにどういうことを学んでほしいと考えていますか?」

“Are there things that you want your grad students or postdocs to learn before they leave your lab?”



「独立できる研究者になることだね。」教授はパッと返してくれた。

そりゃそうですよね、ショボイ質問だった。

すぐに次を考えて、質問してみた。



「学生やポスドクのプロジェクトがいくつかの方向に行く可能性があるとき、どの道を選ぶかはどうやってアドバイスしていますか?」

“When you are advising a postdoc’s project and there are several possible research directions that could be pursued, how do you decide among the various options?”



「いくつかオプションがあるならば、もう知られているコンセプトや安全なオプションよりも、新しいことに挑戦する勇気を持てるようにアドバイスするよ。」



声には出さなかったが、心の中で「お~」と思った。


他にも質問が浮かんできた。



「先生の研究人生で、ご自身の研究者としての成長に役立ったことは、何かありますか?」

“Were there any specific experiences or things that you did that helped you grow as a researcher?”



「ポスドクの時のアドバイザーが私に自由を与えてくれたことが今につながっていると思う。だから私も、できるだけ1人ひとりの力量に合わせて自由を与えることを心がけているよ。でも私はサイエンスがものすごく好きだから、いろいろなサジェスチョンをしたいし、現象を説明するフレームワークを構築することを一緒に考えたりして、サポートしたい。」



話しているうちに教授の考え方に触れて、「この教授のもとで研究者として成長したい」という思いが一層強くなった。

教授への質問は事前に用意していなかったのは反省点だけれど、博士課程在籍中に色々な悩みに直面したり、このブログ「僕らの研究スタイル」で研究との向き合い方についてアウトプットしたりしていたので、自然と聞きたいことが湧き上がってきた。

「あ〜ブログやってて良かった!」と思った。


ラボメンバーとの個別面談も、終始リラックスした雰囲気だった。メンバーとの面談中に話題に上がったのは、ドイツでの暮らしや日本での暮らし、また家族について。その他、ラボメンバーの研究についても聞くことができた。



そしてタイミングを見計らって、何人かのメンバーに以下の質問をしてみた。

1. このラボの強みと弱みは?

“What are the strengths and weaknesses of this lab?”



2. 働く時間はどんな感じ?

“What are the working hours like in this lab?”



3. このラボでうまくやっているポスドクの共通点ってある? 逆に、教授とあまり相性が良くなかったポスドクの共通点はある?

“Are there shared characteristics of postdocs who do well in this lab? Or are there shared characteristics of postdocs who may not fit very well in this lab?”



4. このラボをおすすめしますか?

“Do you recommend this lab?”



ちなみに、メンバーからの回答はほとんどがポジティブなものだった。

以前、情報収集の段階で過去メンバーから得ていた回答ともほぼ一致していたので、みんなが言っていることは信頼できそうだった。

第一印象ではあるが、みんな感じのいい人ばかりだったし、ますますこのラボでポスドクをしたいと思えた。



メンバーとの個別面談を終え、夕刻に教授との最終面談があった。

緊張しっぱなしだった僕も、この頃にはやっとホッとできていた。

すると突然、教授が口頭でオファーをくれた。

僕は一瞬ひるんでしまった。

てっきり数日後に結果をいただけると思っていたので、あまりのことにびっくりしてしまったのだ。

深呼吸をしてまずは感謝を伝えてから、「大きな決断なので、少し考えさせてください。」と伝えた。



選ぶ権利が相手から自分に移り、ちょっと天狗になってしまったのかもしれない。

他からのオファーも無いし、応募しているところすら無いのに。。。

それでもやはり、その場ですぐ「はい、お願いします」とは言えなかった。





「ドイツ語が話せないのに、ドイツで暮らせるのか?」

「マイノリティーになる覚悟はあるのか?」

「この研究室のレベルについていけるのか?」

「このラボの大学院生のほうが今の自分より全然すごい。」

「妻も一緒にドイツに来てくれるか?」

いろんな不安がビールの泡みたいに僕の頭の中に浮き上がってきた。



帰国後、いただいたオファーを受けることにした。

このオファーを受けなかったら後悔すると思ったから。

なにかと逃げ腰な僕だが、少しずつでも攻めの姿勢を人生の決断に取り入れていきたい。



この先、どうなることやら。。。



まとめ:最後に思うこと




振り返ってみると、海外ポスドクの現地面接は雇う側と雇ってもらう側、双方にとっての最終的なすり合わせ・確認作業なのかもしれない。

考えが甘いのかもしれないが、もし現地面接までたどり着けたのなら、かなりの確率で採用してもらえるのではないだろうか。

確率は高いので、そういう心持ちで、誠意を持って自分らしく面接に挑めば良いと思う。



ということは、最初に送るメール(履歴書やカバーレター)と最初に教授と会って話した時の印象が、ポスドク先を見つけるための鍵を握っているかもしれない。

ポスドク先への応募メールの戦略は、この記事に書いたので、興味のある方はぜひ参考にしてみてください。




研究留学や研究関連の英文メールに関しては下記の本が参考になると思います↓↓















留学する前に英語脳をつくりたい方には↓↓




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