今回は「論文タイトルの付け方」について、考えを整理してみたいと思います。
「論文のタイトルなんて思いつきで書けばいいじゃん」という方もいるかもしれませんが、多くの方はタイトルがいかに重要であるか理解されているのではないでしょうか。
タイトルは、あなたの論文の中で最も読まれる部分ですよね。
ですので、じっくり考えて付けることをオススメします。
論文は、自分にとってかわいい子どものようなもの。いい名前を付けてあげたいな〜 |
論文のタイトルはとても重要
本屋さんにふらりと立ち寄った時、棚に並ぶたくさんの本を見て、まずあなたが注目するのは「タイトル」ではないでしょうか。
思わず手に取りたくなるタイトルか、はたまた、スルーしてしまうタイトルか。。。
そう考えると、タイトルって重要だなとつくづく思いますよね。
そこで今回の記事では、次の2つのクエスチョンをもとに「論文タイトルの付け方」について掘り下げてみたいと思います。
① タイトルはなぜ重要なのか?
② タイトルをどうやって付ければいいのか?
① タイトルはなぜ重要なのか?
あなたが何年も費やして研究をし、やっと書き上げた論文。
その中で最も人の目に触れるのが「タイトル」です。
『Google Scholar(グーグル・スカラー)』や『PubMed(パブメド)』で論文を検索している人は、検索結果でヒットした数多の論文の中で「論文のタイトル」を最初に目にします。
そして、その論文を読むかどうか決めると思います。
その人は、あなたの付けたタイトルをクリックしたくなるでしょうか?
タイトルの重要な役割の1つは、論文の内容に興味がある"かもしれない"人を引き寄せることだと思います。
その後の行動も考えてみましょう。
タイトルをクリックしてくれた人は、あなたの論文を読んで期待していた情報を得ることができるでしょうか?
タイトルと論文の内容がマッチしていないと、求めていた情報を得られないので、他の論文を探し出すでしょう。
ですので、タイトルのもう1つの重要な役割は、論文の内容を簡潔かつ的確に表すことだと思います。
② タイトルをどうやって付ければいいのか?
それでは、具体的にどうやってタイトルを付ければ良いのでしょうか?
論文のタイトルは、大きく分けて2つのパターンに分けられると思います。
1. 研究で何が解ったかを示すパターン(結果発表型)
2. 研究したトピックを書くパターン(題材紹介型)
最近の『Nature誌』に掲載された論文をもとに、2パターンのタイトル例を見ていきましょう。
1. 研究で何が解ったかを示すパターン(結果発表型)
タイトル例: The gluconeogenic enzyme PCK1 phosphorylates INSIG1/2 for lipogenesis
これはすごくわかりやすいタイトルだと思います。
一目で「PCK1という分子が INSIG1/2 をリン酸化し脂質の生成を促す」という結論をくみ取ることができます。
「PCK1」や「INSIG1/2」の分子に興味のある人は論文を読みたくなるだろうし、「lipogenesis(脂質生成)」に興味のある人も論文を読みたくなるでしょう。
個人的にはこのようにわかりやすい論文タイトルが好きなので、できる限り「結果発表型パターン」に落とし込もうと心掛けています。
このパターンのタイトルを付ける際に気を付けるべきポイントを考えてみました。
■ 結果発表型タイトルの注意点
注意点1:本当に言い切れるのか考えよう
研究で何が解ったかを示す「言い切りタイプ」の場合、査読の際にreviewerはタイトルで言っていることが本当に言い切れるのかどうか、特に厳しい目線で論文を審査すると思います。
ですので、論文のデータを見返して、どんなに批判的に読まれても言い切れるかどうか、じっくり考えてみることをおすすめします。
注意点2:研究分野や投稿先の基準・傾向を確認しよう
分野やジャーナルによっては、言い切りタイプのタイトルがあまり好まれないケースがあるようです。
その場合には自分の分野や投稿先のスタンダードに合わせるのが無難かもしれません。
注意点3:別パターンが適している場合もある
卒論・修論・博論などの大掛かりな論文では「研究したトピックを書くパターン(題材紹介型)」が好まれることが多いようです。
ですので、論文の種類により適したパターンでタイトル付けされることをオススメします。
2. 研究したトピックを書くパターンの注意点(題材紹介型)
タイトル例: Structure of Mpro from COVID-19 virus and discovery of its inhibitors
これは「COVID-19のMproというタンパク質の分子構造といくつかのinhibitorの発見」というタイトルです。
Mproの構造がどのようなものなのか、そしてどのようなinhibitorが発見されたのかはタイトルに含まれていませんが、COVID-19に興味のある人は論文を読みたくなるでしょう。
著者らがこのようなタイトル付けをした背景としては、おそらく次のような理由が考えられます。
1. Mproの分子構造を言語化するのが難しい
2. Inhibitorの候補がいくつか見つかり、1つに絞るのが難しい
以上を踏まえると、非常にわかりやすいタイトルで、読み手の興味をそそるようなものになっていると思います。
こちらのパターンのタイトルの注意点も考えてみました。
■ 題材紹介型タイトルの注意点
注意点1:タイトルがフワッとしすぎていないか?
研究したトピックだけをタイトルに書く場合、論文の内容が的確に反映されず、全体的に不明瞭でつかみどころのない印象を与えてしまう可能性もあります。
読み手とのミスマッチを防ぐためにも「研究で何が解ったか明確に示すパターン」も考えてみると良いかもしれません。
その上で、より論文内容に適したタイトルを選ぶと良いと思います。
注意点2:キーワード選定はちょうど良い?
タイトルにどのキーワードを盛り込むかがポイントになってくると思います。
トピックが広すぎると、競合が多くて埋もれてしまいます。
一方でトピックを絞りすぎると、検索する人が少なくなってしまいます。
そのため、ちょうど良い"大きさ"のキーワードを選ぶのがおすすめです。
まとめ:
論文が掲載・出版・発表されたら、論文のタイトルを変えることはできません。
なんだか、子どもの名前をつけるのと少し似ていますね。
タイトルを付ける時には「誰に読んでほしいのか、そして何を伝えたいのか」をじっくり考えてみると、いろいろなタイトル案が思い浮かんでくると思います。
なかなか悩ましい作業ではありますが、たくさんの案を出したり推敲を重ねたりして、論文のタイトル付けを楽しんでくださいね。
推敲の際には。。。
□ 自分の付けた論文のタイトルは、読み手の興味をそそるようなタイトルかどうか?
□ 論文の内容を簡潔かつ的確に表せているかどうか?
。。。 自問自答してみてください。
そして、大切に書き上げたあなたの論文に、最高のタイトルを付けてあげてくださいね。
論文執筆が進まない時には下記の本を参考にしてみてはどうでしょうか↓
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