海外ポスドク面接体験記①(アメリカ)
海外ポスドク面接体験記②:それでも葛藤は続く(アメリカ)
あらすじ
3時間後にはプレゼン...
正直あまりよく眠れなかった。緊張しているのもあるが、なにより前日ラボの人の家にディナーに誘われ、夜の10時ぐらいまでお酒の入った飲み会が続いて、ありがたい半面しんどかった。
ただでさえ緊張しているのに、酒も入り、おまけに10時までぶっ通しで人と話すと、頭の中で一日の出来事のフラッシュバックが止まらない。
「眠らないとヤバい」と頭の中で唱えても焦るばかりで効果は無かった。
まったく寝られなかった状態でプレゼン...明日まともに発表できるのか...。
疲れとか、睡眠不足とか、このままポスドクやっていいのかとか、色々な負の要素がまじりあって、自分という人間が「ポスドクのインタビューのプレゼン」という状態とうまく親和していない感覚があった。
本来なら「ここで勝負!絶対受かってやる!」という揺るぎない決意で臨むのが今までの自分だった、でも今回はなぜか受かりたい自分が全開で前に出てきてくれない。
世界トップレベルの研究所で自分の研究を見せるのが怖いし、家族にとって留学がベストな選択なのか、自信がない。
ウーバーを呼んで、知らない人との相乗りにうつむいたまま、背筋が縮こまるような緊張と向き合った。
でもこんな時、いつも助けてくれるのは家族だったりする。
プレゼンでビビりまくっている時、実験がうまくいかないとき、そんな時思うのは「娘に胸を張って、正しかった、と言える振る舞いをすれば良い」ということ。
少し、落ち着きを取り戻したタヌキは一気に気持ちを高めていった。
ラボのミシガン出身のポスドクが会議室に案内してくれた。他のメンバーが集まるまでにはまだ時間があったが、緊張を隠しきれていない自分を見て同情したのか、しばらく話し相手になってくれた。
ちらほらと人が会議室に集まってきて、昨日話した人とは軽くアイコンタクトを取りつつ、ミーティングの始まる空気が出来上がってきた。
「みんないいかな?」
受け入れ先のボスが切り出すと、一気にメンバー全員の視線が集まった。
「今日は日本からタヌキが来てくれた、彼はOO大学のPhD studentで来年の春に~」
ボスから紹介を受けた後、プレゼンをスタートした。
「みなさん、今日は自分のために時間を割いてくれてありがとう」
薄暗い部屋の中で、スクリーンの光に照らされたボスの顔が気になる。
プレゼン中も鋭い(ように見える)目つきが視界の脇にチラつくのを気にしながら、相手に伝わるように心がけて進めていった。
途中いくつも質問が入り、予定していた時間より30分はオーバーした。
なんとなくうまくいったのではないか?というぐらいしかわからなかった。
前回の記事にもあるように、アメリカのポスドクインタビューはとにかく数が多い。
これはラボにもよるみたいだが、他のポスドクと話しても一般的に多いようである。
プレゼンの後も、5~6人と話した。
プレゼンが終わってしまった後は、気楽に話すことが出来たが、既にもうかなりの数の人と話していたこと、前日一睡もできていないこと、プレゼンの疲れもあった。
申し訳ないけど、正直会話もほとんど頭に入ってきていなかった。
その日の夜、ラボの学生2人、シニアポスドク、教授とメキシコ料理を食べに行って、いろいろ話した、いろいろ話したといってもネイティブの高速会話についていくのがやっとではあったけれど。
インタビュー前はあんなに不安な日々を過ごしていたのだけれど、終わってしまえばもう遠い過去の事かのように気分は変わっていた。
ラボの雰囲気も悪くないようだし、この話は受けようかと前向きに考えられそうだ。
一方で、やはりこのまま研究を続けるのか?アメリカで長期滞在するのがベストな選択なのかについてはまだ引っかかっている。
どちらにせよ、受からなければそんな心配も無用だし、あとは結果をのんきにまとう。
ホテルの近くの、海の見えるカフェでフレンチトーストを食べてながら思った。
「大変だったけど、中々良い旅だったな」
後日談...。
帰国した3日後ぐらいに、オファーの連絡をもらった。
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