研究・博士課程をやめたい時励ましてくれた本4冊

博士課程に進むべきか、やめるべきか。プロジェクトは冒険しない方が安全だろうか?留学なんて、帰国できなかったら何のメリットがあるんだろう?


ふとした瞬間、「もうこんなに悩むなら、研究をやめたほうが良いのではないか...」という言葉が浮かんでくる。


もういい年だしリスクを取らないで諦めよう、安全な道に進もう。その方が、恥をかかないで済む...。


誰にでもそんな時ってありますよね。

そんなネガティブな気持ちになった時、悩む姿勢を肯定し、背中を押してくれた本を紹介します。


今回紹介する本は、きっと大学の図書館にもあるはずです。是非一度読んでもらいたい4冊を紹介します。









筆者おすすめ度★★★★☆
amazon評価 3.9/5.0

"このプロジェクトはたぶんうまくいかないと思う。"


この本の中で私が最も勇気づけられたのが、山中先生がiPSの研究を始める前に、

「これでもし、うまくいかなかったら研究を続けられない」と考えていたところです。

山中先生は、当時高橋氏にこんなことを話したどうです。

"このプロジェクトはたぶんうまくいかないと思う。でも人に言うなよと。これで成果が出なかったら、僕はもう研究者ではいられなくなると思うし、君も当然いられなくなる。しかし大丈夫だと。僕には一応医師免許があるから、どこかで小さなクリニックでもやって高橋君を受付として雇うから心配はいらないと。"(p100)

あの山中先生ですら、iPS細胞の研究をすることに、それだけのリスクを感じていたんですね。

当時は既に研究室の主宰者ですから、堅いテーマを長い間続けてもいいわけです。部下のキャリアの責任をとらなければいけない中で、敢えてリスクがあるiPSの研究を推し進めたわけです。

私はメソッドの開発で非常にリスクのある決断をした時にこの本を読みました。このメソッドがうまくいかなければ、博士課程卒業も怪しいといった時に、このエピソードが励みになりました。

もちろん彼のiPS細胞級のプロジェクトではありませんが、うまくいかなくても、自分だけで責任をとればいいのですから。このまま行こうと思えました。今でもその時の選択は間違っていなかったと思っています。


こんな人におすすめ
これから大きなプロジェクトに飛び込もうとしている人。
リスクのある仕事に押しつぶされそうになっている人。







筆者おすすめ度★★★★★
amazon評価 5.0/5.0


研究室で起きていることが、研究の全てではない


畑正憲とはムツゴロウさんです。

世間一般のムツゴロウさんのイメージは「動物好きな変人」でしょうが、私はこの本を読んでそのイメージが全くの間違いであることに気づきました。

この本は、研究者とは一体何なのか?ということを考えさせられる一冊です。

この本の中には畑正憲氏が今まで犬について調べてきたことが沢山書かれています。

彼は研究室などに所属せず、全てフィールドワークで動物について調べています。自分が知りたい動物のために広大な土地を購入し、一緒に暮らすことで動物について知るのです。

また、自分の興味のある人物や動物がいれば一目散に現地に足を運んで、その人や動物と関わり合います。

その大量の出会いと経験から、畑正憲さんなりの"犬とは何か?"という問いに迫って行くのです。

一般的に生物の研究とは、コントロールされた環境でデータを取るというようなイメージですが、それは単に現代のトレンドが還元主義的であるからに過ぎないからなのかもしれません。

研究というのは、方法論ではなく、「なぜ?」について自分なりの考えを持ち、自ら足を運んで調べ、世間に発表することが大事で、この本にはその一番大切な部分があると思うのです。

研究者とは博士号取得者が研究室に所属し、研究職という肩書があるから研究者というのではなく、誰がどこでもやっても良いのではないか...と気づかせてくれる一冊。

もしかしたら、もし今の研究がうまくいかず、研究者をやめなければいけなくなったとしても、研究という活動は違う形でできるかもしれない。

「ムツゴロウさんねぇ、動物好きなのはわかるけど、研究者というにはなぁ...」と思っている人にこそ読んでもらいたい

彼の探究心は常人のそれではありません。100人研究者を連れてきても彼ほどの情熱を持っている人は滅多にいないのではないでしょうか?

残念ながら、現在はプレミア価格がついてしまっています。研究の環境にも慣れ、毎日の細かい作業に埋もれはじめていて、「なんで研究しているんだろう?」と思っているあなたに読んでほしい一冊です。犬はどこから…そしてここへもし図書館などで手に入るなら、是非読んでみてはいかが?


こんな人におすすめ
科学の面白さがよくわからなくなってきている人。
一日中ラボに籠ることに疲れてきている人。








おすすめ度★★★★★
amazon評価 5.0/5.0

元ハーバード大学教授の島岡要先生の著書です。

”最後は状況に押し切られるような状態に自分を追い込み、感情を起動させ、留学をするという価値判断をしてください。"


他の本が「若者は海外にいけ!!」「留学は最高だ!!」とスローガンの如く語るのに対し、

「本当に必要なのか?何がリスクなのか?」「若者にとって何が本当に大事なのか?」など、かなり中立した議論がされています。


他の書籍と比べると、自分の欲しかった情報をストレートに表現している本ではありません、読者が自分の頭で考えるように、直接的な答えを敢えて避けるように書かれているようです。

しかし、一方でこれを読んでいると不思議と留学に前向きになれるというか、元気が湧いてくるのです。

世の中には「迷っているようならやめてしまえ!」「迷うぐらいのモチベーションでは大して成功しないよ」という冷たい声も飛び交っています、そんな中、この本はとことん悩むことを肯定しくれます

留学は苦労するのは間違いはなく、成功する保証もないが、困難に挑戦できることはむしろ贅沢なんだと教えてもらいました。


こんな人におすすめ
これから留学をするけど不安な人。
留学における本音を聞きたい人。






筆者おすすめ度★★★★★
amazon評価 4.1/5.0


35歳から45歳でも、果敢に挑戦する


この本は島岡先生がビジネスでの仕事のノウハウを多く取り入れて、「普通の人」でもサイエンスができることを目的にして書かれた本です。

研究が順風満帆な人ではなく、今もがいている人、成長したい人にとって役に立つメッセージが盛り込まれています。

特に印象的だったのが、「35歳以降になっても失敗を恐れるな」というメッセージです(p21)。

一般的には日本のビジネスパーソンは20代から30代前半で多くの失敗を重ね、35歳ぐらいまでは著しく成長するが、それ以降の50歳までは守りに入ってしまうのでひたすら持久戦となってしまう事が多いらしく。著者はむしろ35からの15年間もどんどん失敗を重ねるべきと提唱しています。

アラサーのタヌキは、30代で守りの人生に歩み寄りたくなる時、この格言を心の支えにしています。

35歳でも果敢に挑戦している人がいるなら、今20代前半の人たちはなおのこと挑戦すべきです。

この本を買ったのは多分3年前ぐらいなのですが、今読み返してみたら前より面白い発見があり、研究ビギナーからベテランの方まで読める、とても深い本だと思います。


自分はスーパースターではないと自覚している人。変化や苦悩を恐れてリスクを取ることに意義を見いだせない人。批判されたり、失敗したりするのが怖いと思っている人におすすめしたいです。

こんな人におすすめ
また若いのに守りに入りたくなってきている人。
35歳以上だけど、自分の研究スタイルに疑問を持ち始めている人。





筆者にそこまでガツンと来なかった2冊




なぜあなたの研究は進まないのか

筆者おすすめ度★★☆☆☆
amazon評価 4.3/5.0

この本は非常にキャッチーなタイトルで、発売後結構売れたみたいです。
私もタイトルが気になって買いました。

amazonレビューも中々好評のようですが、良書かもしれませんが筆者には残念ながらそこまで響く内容ではありませんでした。でも学部生の人や研究初心者にとっては必要な情報が詰まっているのは確かです。

なぜ評価をしないかというと、筆者が一番研究が進まなかった時に読んでみたら、この本の中にあることをある程度パスしているたからです。つまりこの本には答えが書いてありませんでした。

こんな人におすすめ
研究初心者の人。
学部生で初めて研究をする人。





できる研究者の論文生産術


筆者おすすめ度★★☆☆☆
amazon評価 4.2/5.0

この本はポール・シルビアさんのHow to write a lotの日本語訳です。タイトルの通り「とにかく多く書く」ことを目的とした本です。

「書く」ということがどれだけ大変で、いかに工夫して書くためのメンタルや時間を作るかについて説いています。実際に私もこの本を基に、実践してみたことが沢山あります。

個人的には本のメッセージそのものはフルで読まなければならないほど沢山あるわけではないですが、たくさん書きたい人にとっては使えるノウハウが散りばめられているので、書くことがルーチーン化できていない人にとってはお勧めの一冊です。

この本の欠点
長い割にはメッセージが「時間を設ける」「書き続ける」という2つしか無いように思える。

こんな人におすすめ
忙しすぎて論文を書く暇がないと思っている人
過去の未発表データが貯まっている人


オマケの1冊




日本語の作文技術

おすすめ度★★★★☆
amazon評価 3.9/5.0

日本語の作文を勉強したい!という人にまず飛び込んでくるこの著作。

日本語の作文を勉強したい人は大抵この本が最初に挙がってくると思います。

例えば以下の文章、正しい修飾と言えるでしょうか?

X介在神経は、著しい興奮性入力を受けているY介在神経に比べると、ドーパミン神経への影響力を持たない。

答え場バツです。この場合、正しい順序は

著しい興奮性入力を受けているY介在神経に比べると、X介在神経はドーパミン神経への影響力を持たない。

です。

正直すごくわかりやすい本ではないですが、科学者とはいえ物書きですから、「辞書」として持っておくのは良いと思います。

この本の欠点
初見では読みにくい。少しずつ読んで、付箋を貼って、自分なりに辞書とまで使えるまで育てるのに時間がかかる。

こんな人におすすめ
日本語のグラントをよく書いている人。
日本語作文を一度見直したい人。

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