博士課程で人生終了!
寂しい響きですね...
しかし興味深いことにこのブログのアクセスを見ると「博士課程」「人生終了」というキーワードで入ってくる人がいます。
なぜ人々は「博士課程 人生終了」という検索をかけるのでしょうか。
博士課程に行きたいけど、人生終了したくない人たちでしょうか?これからやろうとしている事に対して不安がある。それに対して他の人がどのように発信してるか気になるのはわかります。(私も入学前に一度ぐらい検索したかもしれません)
博士課程に行ったけど、人生終了したくない人たちでしょうか?既に博士課程に入ってから不安になる人もいるかもしれません。そういった人たちはこの先一体何が待っているのか知りたいのかもしれません。
はたまた、博士課程に行くと人生終了すると思いたい人たちなのでしょうか?例えば、博士課程に行きたいと言い出した息子を、行かないように説得したい親御さん。あとは、博士課程に行きたくても、何らかの理由があって行けない、いっそのこと博士課程が自分にとっては望まくし無いと思いたい人。
今回は「博士課程 人生終了」で検索して来た人たちに、「ああ、やっぱり博士課程は人生終了するんだな、行くのやめて良かった!」と思うための記事ではなく、少しでも新しい知見を持ち帰ってもらい、前に進めるような記事を書きたいと思います。
筆者はこの記事を書いたのには理由があります。それは「優秀な学生は良いラボに行ってほしい」「博士課程をネガティブにとらえるのではなく、現実的に決断してほしい」という願いです。日本の科学技術はこれからの若者にかかっています!また、国という垣根の無い研究開発において博士号を所有者の需要も今後一層高まると思われます。できれば日本のエリートといわれる人たちは、大企業で就職を目指すのもいいですが、アカデミアにも来て盛り上げてほしい。また、「こういった知識を継承させれば、駄目な研究室の力が弱まってくれる」という願いも含まれています(笑)。
0.そもそも人生終了とは何か?リスクは正しく恐れよう。
人生終了とはなんでしょう。博士課程で、人生終了してしまう要素ってどんなことでしょうか。人生終了!!と無駄に怖がる前にそもそも人生終了についてもう少し考えてみましょう。
0-1. 博士課程に行くことによって、学士から入れば叶うはずだったバラ色の大企業出世コースから外れてしまう。
人によっては人生終了なのかもしれません。でも博士課程に行かなかったから全て上手くいくという見立ても甘いと思います。もし内資系大企業に新卒で入社し一生同じ会社で勤め上げるのであれば、学士から入るのが良いでしょう。しかし、外資系の大企業は普通に博士号取得者を採用しています。さらにいえば、その新卒終身雇用モデルは崩壊しつつあります。
”大企業の製造業に従事している男性従業員の割合は全体の 4%である。このように調査方法によって、多少の違いはあるものの、終身雇用と呼ぶような長期雇用となっていた従業員は、人口全体のごく一部を占めているに過ぎない1。”(NIRA研究報告書 2009)
0-2. 大学教員ポストを勝ち取れないので人生終了。
これも良く目に入る話ですね。大学教員のポストが無いのはガチです。第一次ベビーブーム世代の引退が相次いでいるはずなのですが、だからといって「教員ポスト見つかりやすくなった」という話は全く聞きません。大学教員以外にも仕事はあるので、柔軟な視野を持つことが大事になるのは間違いないです。大学教員以外だと人生終了なのであれば話は別ですが...。これについてはかなり明確なデータがあるはずなので後日更新します。
0-3. 博士課程卒業後は年を取り過ぎているので就職不可能。
これは人生終了なのかどうか置いておいて、そもそも根拠が古すぎます*。実は近年博士号取得者の需要は増加しています**。私の知り合いの博士号取得者は全員就職できました。退学した人でも仕事は見つかっています。逆に
博士号所持者のみが応募できる民間企業の仕事もあるんですよ。また、今後日本はおそらく、過去の「改善と価格競争における利」で食いつないでいくのは、中国などの台頭によりほぼ不可能になると思われます。イノベーションを軸とした経済活動をしなければいけない時に、博士号を持っている人たちの活躍は益々必要になると思います***。
0-4. 借金まみれで人生終了
博士課程で奨学金をフルで借りると確かに物凄い借金になります。私もこれはお勧めできません。しかしながら、様々な制度を活用して、借金を抑えることも可能です。例えば、学振DC以外にも色々な制度があります[1]。お金のかからないプログラムもありますし、LabBaseにある
奨学金検索システムを使えば、学振以外の様々な給付型奨学金制度に応募できることがわかるでしょう。
また、博士課程の内部収益率・私的収益率は5-10%程であるという興味深いデータ[2,3]もあります。しかし一方で、これらのデータは在学中の収益を年間100万から300万のマイナスを仮定しているため(
申し訳ないけど雑な分析だなと思いました)、もしそれを大幅に超える負債を抱えるのであれば別です。学振などで、年間の収益をプラスに持って行くことが出来ればさらに内部収益率を上げることもできるかもしれません。
1, 博士課程で収入を得る:給付型奨学金や給料の出る機関を調べてみました
0-5. 精神を病んでしまう。
0-6. 収入がないため結婚できなくなってしまう。
私の知っている中では、これは半分事実ですし、半分嘘です。例えば給付型の奨学金を得ている人はむしろ結構結婚できている人がいます。また、中にはパートナーに養ってもらったという人もいます。アカリクのアンケート*によれば、アンケート回答者のうち10%が既婚者だったそうです(理系文系・修士博士含む)。確かに同世代(25-30ぐらいを想定)の全体平均**と比較すると低いですね。二十代後半で無収入であることも一つの理由かもしれません、だからこそ、真剣に博士課程を選んでほしいですし、「
給付型奨学金や給与の出る機関のリスト」を読んで、お金を貰いながら学位取得できるチャンスにドシドシ応募して欲しいのです。
*アカリク生の声:院生百分率
**年齢別の未婚率・婚姻率と結婚する確率
ざっくりいくつかのワーストケースシナリオを書いてみまし。大事なのは、
- 「最悪のケースって本当に最悪なのだろうか?」
- 「全体でいう何割の人がそうなっているのか?」
- 「対策はないのか?」
と一度冷静に考えてみることです。
人生終了なんでいう言葉のゴーストに惑わされてやみくもに恐れるよりも、それを受け入れつつ、避ける方法を考え、現実的な将来を描く方が重要です。
しかしながら、博士課程に進むにあたり、気を付けなければいけないことは沢山あります。博士課程が色々な意味でリスクがあることは事実ですし、博士号を取得するということは、そこまで甘くありません。
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