研究者の向き不向き、研究者向きの性格や研究の進め方などについて話し合ってみたいと思います。
それではゴー!
🐢カメ🐢:こんにちは~
🐻タヌキ🐻:卒業おめでとうございます。
🐢カメ🐢:ありがと~。
二人ともなんとか卒業できたわけだけど、まず、博士課程を振り返ってみてどういう感情が強い?
🐻タヌキ🐻:とりあえず終わってホッとしたかな。
「学位がとれなかったらどうしよう」というプレッシャーは常にあったよね。
あと毎回どこへ行っても「学生です」と言わなければいけなかったのが、「博士/PhD」と堂々と名乗れるようになったのは予想していたより嬉しい。
カメはどう?
🐢カメ🐢:同じだと思う。
なんとか切り抜けて生還できた、みたいな。
喜びというよりは、安堵感が強いかもしれない。
もしもパラレル・ワールドで何人もの自分がいるとしたら、博士号を取れていない自分もいると思うから、このワールドの自分は運が良かったと思ってる。
🐻タヌキ🐻:パラレル・ワールド(笑)。博士課程の生活を振り返ってみて、ここは成長できたなっていう部分てある?
🐢カメ🐢:成長か~。
やっぱり、研究の進め方というか、一つのプロジェクトの組み立て方については自信がついたかもしれない。
もちろんまだまだ未熟だけど、博士課程に入る前よりは成長していると思う。
いろんな自主トレにも挑戦してみたし、やっぱり何も無いところから論文というカタチのあるものを創り出せたのは自分にとって大きかったと思う。
タヌキは?
🐻タヌキ🐻:研究プロジェクトについてかなり体系的に見渡せるようになったと思う。
最初は自分はこのアプローチが好きなんだ!こういう研究をやりたいんだ!という我が強すぎたように思う。結果、周囲のアドバイスも聞いているようで実際は取り入れなかったりしてた。
今は研究プランを立てる時に「ここは時間がかかりすぎないか?」とか「ここは結構リスクある」とか、周囲の意見も身に染みる。失敗した経験があるから相手の意見を机上の空論ではなく、素直に理解できるようになったかな。
あとはメンタルが強くなったね、博士課程は修羅場の連続だから、ちょっとやそっとの出来事では物怖じしなくなった。
🐢カメ🐢:メンタルが強くなったっていうのはちょっと聞いてみたいな~。
個人的にはメンタルの部分はもうちょっと成長したかった。
修羅場を経験していたときにメンタルを維持するためにやって良かったこととか、効果的だった「心の持ちよう」とかはあった?
🐻タヌキ🐻:「研究者じゃない自分」を育てることは意識したと思う。
自分の周囲を全て研究関連で埋めてしまうと研究がうまく行かない時、この世の終わりみたいな気分になるから。
博士3年目にプロジェクトの根幹となるメソッドがボツになりかけた事があるんだけど、その時に「博士を取る以外の自分も価値がある」という方向に持って行かないとメンタルがヤバかったと思う。
自分の場合は転職エージェントと相談(過去記事)して「企業に行った場合の自分」を知ったりするのは「研究者じゃない自分」のイメージに役立ったと思う。
🐢カメ🐢:「研究者じゃない自分」を意識するのはすごく重要だと思う。
そして自分はそのことを忘れがちになってしまう傾向があるから、定期的に思い出して、「研究者じゃない自分」も育てていきたいな~。
🐻タヌキ🐻:カメは博士課程で一番の修羅場を挙げるとしたら何?
その修羅場はどうやったら避けられるものだったと思う?
🐢カメ🐢:やっぱり一番の修羅場は博士課程の中盤で、「ヤバイ、卒業できないかも」と思っていたころだと思う。
研究テーマの決め方の記事でも自分の盲点について書いたけど、「核となるデータを得られるまでにかかる時間」をあまり考えなかったのは痛かった。
Aを創って、Bをやって、Cの解析をして、Dでやっと何か新しいモノが見つかるかもしれないというようなプロジェクトを計画したから、Dにたどり着くまでのおよそ2年の間は恐くて恐くてしょうがなかった。
運と執念でなんとか切り抜けたけど、スピードが遅すぎで、Dを見つけてからのE、Fまで行けず、やりたかった実験ができなかったし、研究にもあまり厚みを加えることができなかった。
こうなった理由はもちろん自分の研究テーマを決める能力が乏しかったというのもあるけど、もう一つの理由は自分のやりたいこと、ラボとボスの強み、研究施設のリソースやノウハウ、がうまくフィットしていなかったからだと思う。
せめて、Aをやったことがあるラボとか、Cの解析方法を教えてもらえるようなラボであれば、Dにたどり着くまでのスピードは上がっていたと思う。
ゼロからたちあげないといけない過程でプロジェクトを遂行する能力はついたけど、効率が良かったとは思えない。
だからポスドク先は自分の興味、ラボの強み、研究施設のリソースが「カチッ、カチッ、カチッ」みたいにフィットするところを意識して探そうと思ったかな。
タヌキはもうすぐアメリカでのポスドク生活が始まるけど、ポスドク先ではしたくないミスとか、意識してることはある?
🐻タヌキ🐻:1つめは、カメの言ったように、ラボの強み、研究施設のリソースが合う点を探して、なるべく自分だけで1つの工程や作業に時間をかけるという状態を作らないようにしたいね。
結果プロジェクト全体として深く追求できるよう仕掛けたい。
そのためには、Core Facilityであるとか、手伝ってもらう部分はちゃんと手伝ってもらって、チームとして成功したいね。
もう一つ意識したいところは、徹底的に思考してから選択・行動する事かな。
受入れ先のPIからプロジェクトの候補を2つ受け取ったんだ。
その中から興味あるのを教えてほしいと言われていて、でもこれが意外と難しい。
上でも言っていた、ラボの強み、研究施設のリソースを考慮して決断する事って結構思考のエネルギーが要るんだよね。
そういう時には「やってみなければわからないし、とりあえずこれにしよう!」と思考停止するのではなく、しっかりと文章化して考えながら、利点・欠点を踏まえて戦略的有利な決断する習慣をつけたいね。
時間はかかるかもしれないけど、無駄な事をしないで済むようにしたい。
カメも次はドイツでポスドクするわけだけど、次はココを意識したいとかある?
🐢カメ🐢:うん、タヌキが言ってる「徹底的に思考してから選択・行動する事」については意識したいと思ってる。
「とりあえず手を動かせ」って良く聞くアドバイスだけど、それってどうなのかなって思い始めてるんだよね。
いろいろ考え抜いて、調べまくって、これまでのデータをジーッと見つめなおして、それでもまだ良くわからんってときにだけ「とりあえず手を動かせ」に頼ればいいと今は思ってる。
考えたり、調べたりする時間がもったいないと思うのか、無駄な実験をするのがもったいないと思うのかの違いだと思う。
自分の場合は実験のほうが時間も労力もかかるから、できるだけ考えることとか計画を練ることを習慣化していきたい。
でもこれと同時に、論理的には説明できない「わくわく感」とか「話していてなんか楽しい」方向に向かっていくことは忘れたくない。
博士課程のラボが放任ラボでよかったことは自分の興味があるクエスチョンを追求できたことで、その点はすごく恵まれていたと思う。
これからはモチベーションを維持するのも重要になってくると思うから、モチベーションの燃料になる「わくわく感」をいっぱい感じられる研究テーマをポスドク先のボスと話し合って決めたいな。
じゃ~、結構長くなってきたから最後のトピック!
タヌキは自分自身の「研究者の向き不向き」についてどう考えてる?
博士課程に入る前とあとで変わった?
🐻タヌキ🐻:博士課程に入る前は、研究者はとにかくパズル的な頭のいい人がやるものだと思ってた。
トップ進学校出身でIQ130ですみたいな。
どちらにも当てはまらない自分は研究者に向いてるとは全然思わなかった。
でも博士課程入って、かなり色々なタイプの成功者がいることに気づいた。
マネジメントは下手だけど作文の上手い人とか、抜群に論理的だけど政治力無い人とか。
研究に向いているにも色々あって、分野と目的で役に立つ素質が違うのではないかと思う。
勿論上で言ったような天才が生きる世界もあるし、一方で、戦略性や創造性であることとか、几帳面であることが強みになる世界もあるのではないかと思う。
自分自身の向き不向きで考えたら、長期的な戦略を練ることが好きな事と、継続して努力できることは向いている部分ではないかな。
自分の脳神経科学(生物系)はプロジェクトのスパンがかなり長いから、かなり先にやってくる分岐点を予想して計画を立てる戦略は役に立ったと思う。
またそれを実現するために毎日同じ時間に実験するとかも嫌いじゃないからそこは良いとこかな。
一方で、現状アカデミアで40-50歳とやっていくには、グループリーダーや教授になるしか選択肢が無いように見えるから、教授になるんだ!という気概が自分にはまだ足りない気がする。
今までは研究の面白さとかオリジナリティーとかそういう部分ばかり考えてたから。
教授になるというゴールに一直線の人は、見ていてやっぱり強い気がする。
そうしなくても済むテクニックがあればいいけどね。
カメはどう思う?
🐢カメ🐢:博士課程の序盤、特に研究が進まないころは「研究に向いてない」という思いと常に格闘してたと思う。
まだ拭いきれてないけど、最近は「自分みたいな研究者もいてもいんじゃね?」って思えるようになったかもしれない。
実はこのブログの一番のヒット記事は「研究に向いてない」という想いを書いた記事なんだよね。
ということはそう思ってる人がたくさんいると思う。
もしも自分がなんとか研究者として生き延びることができたら、遅咲きの院生とか研究者としての資質に疑問を持っている人でもうまくサポートして能力を引き出せるんじゃないかなって。
もうちょっとロジカルに考えると、研究者の道を歩むにあたって、絶対やらないといけなくなることは4つあるんじゃないかな。
それは「①研究環境を整えること(お金・設備)」、「②何を研究するか決めること」、「③何か新しいことをみつけること」、そして「④新しいことをみんなに伝えること」。
研究を始めるステージではほぼ③だけやってれば良いけど、グループ・リーダーとか教授になると①、②、と④をやらないといけなくなる。
最終的にこの4つができるようにならないといけない。
だから唯一「研究者向きかどうか」について考えるべきことはこの4つをすることが好きか(好きになれそうか)、そしてやりがいを感じるか(感じれそうか)だけじゃないかな。
「研究者の向き不向き」に関してはそれに限ると思う。
でも「自分の向き不向き」は常に深堀りしていかないといけないと思う。
タヌキが言ったように、同じ分野でも、理論が得意な人もいれば、職人技の実験を習得するのが得意な人もいる。
自分の弱みをどうやって克服できるかよりも、いかに自分の強みがさらに開花できる場所を見つけられるかが重要なんじゃないかな。
得意なことを全然発揮できないところに行ってしまったら、誰も得にならないよね。
もしも強みだけに頼りすぎて壁にぶち当たったときは、他のことと掛け合わせて、強みの幅を膨らませる感じでいいんじゃないかな。
研究者の道を歩んでいくと、学部から修士、修士から博士、博士からポスドクで、環境を変えるチャンスがやってくるから、そのタイミングで自分の強みを活かせて、伸ばせる環境に移る(またはとどまる)ことが大事だと思う。
それをするには常に自分がいったい「何に対してやりがいを感じるのか」とか「どのような作業が楽しいのか」という自分の性格について正直に向き合わないといけないんじゃないかな。
まだいろいろ自分の中でモヤモヤはあるけど、とりあえずこれが今の自分の考え方だと思う。
🐻タヌキ🐻:個人としての研究者でいえば③だけでもいいわけだからね。
でも続けていくには①、②、④ が出来るオールラウンダーじゃないといけない。
もっと日本もPI以外で研究を続けることのできる構造になってくれるといいよね。
🐢カメ🐢:その通りだね。
じゃ~最後の最後に「博士課程を始めたての自分」に一言アドバイスをお願いします。
🐻タヌキ🐻:「大丈夫、うまく行くから落ち着いてやりなさい。」と言いたいところだけど、うまく行かない可能性も十分あったからね。
別次元のアプローチをいくつか持つこと。上手くいかないアプローチに固執し過ぎない事。これに尽きますね。
🐢カメ🐢:じゃ~俺は「仲間が一人だけでもいれば博士課程の楽しさはガラッと変わるから、なにがなんでもタヌキと友達になっとけ!」かな(笑)。
🐻タヌキ🐻:まさかの友情オチですか!?
🐢カメ🐢:アメリカ行がないで~(涙)。。。
🐻タヌキ🐻&🐢カメ🐢:これまで「僕らの研究スタイル」を応援していただき、ありがとうございます。
最初は自分たちの考えをアウトプットするメモ帳のようなものとしてスタートしましたが、最近は多くの方に記事を読んでいただいており、記事を書くやりがいを感じています。
みなさんが博士課程や大学院生活を過ごす中で、少しでも僕らの失敗や学びが参考になれば、嬉しく思います。
これからもアメリカとドイツから海外の研究スタイルや生活のことを発信していきたいと思うので、今後も「僕らの研究スタイル」をよろしくお願いしま~す!
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