学振DCの自己評価で低評価されがちな傾向5つ


こんにちは、前回は学振DC:自己評価には何を書くべきか?という記事を書きました。

筆者は有難いことに、あれから何度も他の方の学振の申請書を見る機会を頂きました。

何枚かチェックしているうちに、「何か物足りないかもしれない」「結構みんな同じような事書いているかもしれない」と感じる時にある共通した事に気づきました。

というわけで、今回は学振DCの最も書きにくい部分である、自己評価において色々な人が陥りがちな傾向についてまとめました。少しでもお役に立てれば幸いです。




1.内容がほぼ他の申請書と丸かぶりしている


ブログ 一研究者・教育者の意見 の記事には学振の審査経験について紹介されています。その中に、自己評価欄は殆どの人が同じような事を書いている、という衝撃の事実が記載されています。

以下引用
”「自己評価」については、ほとんどの人が同じようなことを書いている。「研究職の志望動機」は「好奇心が強い」、「試行錯誤によって知識を積み上げることに喜びを感じる」、「生命の持つ普遍性と多様性に魅了された」。「目指す研究者像」は、「現在の専門に捕われず、幅広い知識を身につけた研究者」、「社会のために貢献できる研究者」、「コミュニケーション能力の高い研究者」「国際的に活躍できる研究者」であり、いずれも私の院生時代よりも高い理想を持っている。「長所」はほとんどの人が「忍耐強い」、「ハードワーカー」をあげ、さらに「教員や下の院生とのコミュニケーション能力の高さ」、「行動力」等をあげる人もいる。”

学振はDCに限らず、とにかく大量の書類が送られてきます。丸かぶりだとそもそも他の申請書と比較しようがないですし、評価者のモチベーションが下がります。


実際に、私も「粘り強さ」「忍耐」などは非常に良く出会うキーワードでした。そして、「学際性」という一見少ないような気がするキーワードにも良く出会います。次にコミュニケーションとかでしょうか?


ただ、これらのワードを使ってはいけないわけではないと思います。キーワードが被っていても、それを裏付ける個性的なストーリーがあれば良いわけです。


2.キーワードを絞り切れていない

私は物理学で培った論理的思考能力を生かし、粘り強く研究に没頭することによって、この分野に独創的かつ将来応用可能な技術を生み出せる研究者になりたい。

言いたいことが有り余って、キーワードが多すぎるパターンも良く見受けられました。

主張したい!という気持ちは伝わってくるのですが、読みやすさが低下してしまうのであまりお勧めできません。

わかっていても私もやってしまうことがあるんです。難しいのですが、できればキーワードを絞って、シンプルなメッセージを伝えるよう心掛けるのが大切だと思います。



3.暗に他者を否定した言い回しは使わない→ポジティブに言い換えられます


これは私が発見したのではなく、現在の指導教官に指摘されたことなのですが。例えば...

現在の~~の進歩により、XXはあまり重要視されなくなってきた。
XXについては殆ど明らかになっていない。
AAやXXなどがある中でも最も重要視すべきはYYである。

もしあなたの申請書を見た先生がXXの研究を20年以上していて、研究を始めて2年そこらの若造が「XXは殆ど明らかになってないですよね~」とか言ってきたらどう思うでしょうか。

きっと少々不快な思いを持つと思います。ここで人間のできた人物であれば、冷静さを保ってくれると思いますが、何十枚も申請書を読み解かなければいけない審査員の先生方はそこまで精神的に余裕がないかもしれません。


自分の主張を通すために、他の知見、手法をディスるのは避けた方がいいと思います。ポジティブな面を照らす方が前向きな自己主張になります。

修正前:現在の~~の進歩により、XXはあまり重要視されなくなってきた。したがってYYについての研究が求められている。
修正後:現在の~~の進歩により、YYのさらなる解明が期待されている。

これは学振の自己評価に限らず、研究内容の背景や、論文でも頭に入れておいて損は無いと思います。




4.抽象的な単語はそのままにしない:辞書で噛み砕けます!


粘り強さ|行動力|国際的なコミニュケーション力

女子力、コミュ力、などの短く表現の欠点として、一つの単語に意味を期待し過ぎるということがあると思います。例えば。


私には行動力があります。


「行動力」とはなんでしょう?辞書で調べてみると。


行動力:”何かを思い立った際に、実際に行動を起こし、それを実現する力。または、そうした実現に向けて行動する勇気や度胸などのことを幅広く指す表現。”(ソース:実用日本語表現辞典)


行動力という単語だけでは頭に何も思い浮かびませんが、


何かを思い立った際に、実際に行動を起こし、それを実現する力。


実現に向けて行動する勇気や度胸


と表現されると、一気に人物像が頭に浮かびあがります。

これは2番目のポイントともつながってくるのですが、キーワードを絞り切れていないのと、単語の羅列が組み合わさってしまうケースも良く見られます。わたしもやってしまうので、決して上から目線では語れないのですが。



5.漢字が多すぎる:ひらがなの黄金比率を意識しよう


これはまだ研究が足りない分野ですが、作文において漢字とひらがなには読みやすい比率があるという説があります。


黄金比のソースが見つからないので、仕方ありませんが、一応以下の引用を紹介します。

"では、コンテンツにおける漢字とひらがなの黄金比はどれくらいなのでしょうか。
これに関しては、様々な意見がありますが「漢字:ひらがな=3:7」の割合が一番読みやすく、美しい文章になります。"
(ソース https://www.sakurasaku-labo.jp/blogs/writingkouza2)


おそらくアカデミアにおいては、もう少し漢字の率を上げても良いかもしれませんが、新聞の漢字使用率が40%ほどなので、もしそれ以上に使用している場合は、新聞よりも漢字を多用している事になります。


不必要に漢字を使っていないかチェックしてみるといいかもしれません。


漢字使用率チェッカー(http://akind.dee.cc/kanjiritsuchk-input.html


また実際に、漢字の難易度が上がれば上がるほど読むのに時間がかかるという研究結果もあるので、仮説としては無視できないかもしれません(ref 1)。


#1 山田浩貴, 加藤麻樹. ディスプレイ上の日本文の難易度が眼球運動と可読性に与える影響. 人間工学. 2018


以上が私が気づいた陥りがちな傾向5選です。ほかにもたくさんありますが、この5つが最も多かった気がします。


学振への応募を考えている方は、こちらの記事も是非どうぞ!
学振DC:自己評価には何を書くべきか?学振DC1 いつから?どれくらい準備した?学振の書き方は二の次!コレをしたら学振DCに4人中4人受かった
研究者をやめたい時励ましてくれた本4冊

↓実はタヌキも一度飲み会で会った事のある大上先生の学振解説本。

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