ねつ造が行われる背景には想像もできないことが多くあるでしょう。
ただこのような事件を個人の責任に帰属させては、業界全体の改善にもつながらないような気がします。
権威のある研究機関ではビッグジャーナルに投稿するプレッシャーがあることは確かですし、研究者自身がインパクトファクター高い雑誌に掲載されるようなわかりやすい指標で評価されなければ、キャリアを築くことが難しいことも事実です。
私の所属している機関にもCell系姉妹紙の元エディターの人がレクチャーをしに来たのですが、重要なのは「Conceptual Advance」だと言っていました。
メッセージ性の高い論文は仮説検証型の実験であることが多々見受けられます。仮説検証型研究では明らかにするアイディアわかりやすく示すことが出来るからです。
- 明らかにしたいアイディアが明確
- 主軸となるメッセージが強い(インパクトが強い)
- 仮説に合わせて実験デザインを組む
- 伝えたいメッセージは後から生まれる
- 主軸となるメッセージ性は若干薄まる
- 全体を見渡せる実験デザインを組むのが難しい
この中で仮説検証型において、“一番楽しいのは,計画を立てているとき.”という記述があります。
しかし、ひとたび実験を始めればその仮説が重くのしかかります。仮説を証明することに重点を置きすぎると実験作業はただの労働になってしまいます。実験に多くの時間を割く生物系研究において一番楽しいのが「計画を立てている時」というのは結構辛いです。
近年ノーベル賞を受賞した大村博士が発見したイベルメクチンはゴルフ場で発見されたというのは有名な話です。仮説検証だけでは良い科学が生まれないのも事実です。仮説検証型研究のスタイルが合わない場合は、探索的研究を行える実験テーマを選ぶのも一つの選択肢なのかもしれませんね。
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